介護保険は何が使える?要介護認定の受け方と自己負担のしくみ

更新:2026年8月 ・ 読了目安 約7分

40歳になると給与から介護保険料が引かれ始めます。ところが「では何が使えるのか」は、いざ必要になるまで知らないままのことがほとんどです。使えるようになるのはいつからか、要介護認定はどう受けるのか、自己負担はいくらか。親の介護が始まってから調べるより、先に地図を持っておくための整理です。

📑 この記事でわかること
  1. 払い始めるのは40歳。でも使えるのは原則65歳から
  2. 要介護認定は、申請しないと始まらない
  3. 要介護度で「使える上限」が決まる
  4. 自己負担は1割。ただし所得が高いと2割・3割
  5. 月の負担にも上限がある(高額介護サービス費)
  6. わが家の考え:元気なうちに「窓口の名前」だけ覚えておく
  7. よくある質問
  8. まとめ

払い始めるのは40歳。でも使えるのは原則65歳から

介護保険の加入者は年齢で2つに分かれます。ここが最初のつまずきどころです。

第1号被保険者第2号被保険者
年齢65歳以上40〜64歳
使える条件原因を問わない特定疾病による場合に限る
保険料原則、年金から天引き医療保険料と一括で徴収

40〜64歳の人は、保険料を払っていても、原因が「加齢に起因する病気(特定疾病)」でなければ使えません。末期がん・関節リウマチ・脳血管疾患・初老期の認知症・パーキンソン病関連疾患などが該当します。たとえば交通事故で介護が必要になっても、40〜64歳では介護保険の対象外です。

実際、要介護・要支援の認定を受けている人は、こう分かれています。

区分認定者数その年代に占める割合
65〜74歳71万人4.3%
75歳以上610万人31.3%
40〜64歳13万人0.3%

75歳以上では3人に1人が認定を受けています。一方で65〜74歳では4.3%。介護が現実になるのは、多くの場合75歳を過ぎてからだと分かります。

要介護認定は、申請しないと始まらない

介護保険は自分(または家族)が申請して認定を受けないと、1円も使えません。高額療養費や障害年金と同じで、待っていても向こうからは来ない制度です。

認定の流れは全国共通です。

手順内容
① 申請市区町村の窓口、または地域包括支援センターへ。本人以外に家族でも申請できます
② 調査認定調査員が自宅などを訪問し、心身の状況を調べます(基本調査74項目)。あわせて主治医意見書を市区町村が主治医に依頼します
③ 一次判定調査結果と主治医意見書をもとに、コンピュータが「要介護認定基準時間」を推計します
④ 二次判定保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が審査します
⑤ 認定市区町村が要支援1〜2・要介護1〜5、または非該当を決定します
最初の相談先は「地域包括支援センター」
中学校区ごとに置かれている、高齢者の総合相談窓口です。申請の代行もしてくれます。「どこに相談すればいいか分からない」ときは、市区町村のサイトで「地域包括支援センター+自治体名」を調べるのが最短です。相談は無料です。

認定調査では、できないことを正確に伝えるのが大切です。高齢の方は調査員の前で頑張ってしまい、普段より「できる」ように見えてしまうことがあります。家族が同席し、日頃の困りごと(夜間の様子、失敗した出来事、時間がかかること)をメモにして渡すと、実態が反映されやすくなります。

要介護度で「使える上限」が決まる

在宅でサービスを使う場合、要介護度ごとに1か月に使える上限(区分支給限度基準額)が決まっています。この範囲内なら1〜3割の自己負担で済み、超えた分は全額自己負担になります。

区分1か月の上限1割負担なら
要支援150,320円約5,032円
要支援2105,310円約10,531円
要介護1167,650円約16,765円
要介護2197,050円約19,705円
要介護3270,480円約27,048円
要介護4309,380円約30,938円
要介護5362,170円約36,217円

要支援1と要介護5では7倍以上の差があります。なお実際の金額は「単位」で計算され、地域やサービスの種類によって1単位あたりの単価が変わるため、上の金額は目安です。

ケアプランの作成(居宅介護支援)は全額が保険給付で、利用者の自己負担はありません。ケアマネジャーへの相談で費用が発生しない点は、覚えておくと相談のハードルが下がります。

自己負担は1割。ただし所得が高いと2割・3割

負担割合条件
3割合計所得金額220万円以上 かつ 年金収入+その他の合計所得金額が単身340万円以上(夫婦463万円以上)
2割合計所得金額160万円以上 かつ 年金収入+その他の合計所得金額が単身280万円以上(夫婦346万円以上)
1割上記に当てはまらない場合

ポイントは2つの条件を両方満たしたときだけ割合が上がることです。合計所得金額が160万円以上でも、年金収入等が単身280万円に届かなければ1割のままです。判定は毎年行われ、負担割合証が交付されます。

月の負担にも上限がある(高額介護サービス費)

医療費に高額療養費があるように、介護にも1か月の自己負担の上限があります。超えた分は申請すれば戻ってきます。

区分上限(月額)
課税所得690万円以上140,100円(世帯)
課税所得380万〜690万円93,000円(世帯)
市町村民税課税〜課税所得380万円44,400円(世帯)
市町村民税世帯非課税24,600円(世帯)
非課税で年金等の収入が80.9万円以下24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している方等15,000円
「上限があるから安心」ではない部分に注意
この上限に含まれるのは介護サービスの自己負担分だけです。施設に入った場合の居住費・食費・日常生活費(理美容代など)は対象外で、別に負担が続きます。また区分支給限度基準額を超えて使った分も対象外です。「上限44,400円だから月4万円台で収まる」とは限りません。

さらに、1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)の医療費と介護費を合算して上限を超えた分が戻る「高額介護合算療養費」もあります。医療と介護が同時にかかっている世帯では、こちらも確認する価値があります(→高額療養費とは?)。

高額療養費の「多数回該当」と、高額介護サービス費の課税所得380万円未満の区分は、どちらも44,400円で数字が同じです。別々の制度なので混同しないようご注意ください。

わが家の考え:元気なうちに「窓口の名前」だけ覚えておく

介護は、必要になったときには落ち着いて調べる余裕がないことがほとんどです。倒れた、転んで骨折した、様子がおかしい——そういう場面から始まります。

だから元気なうちにやっておくことは、制度を隅々まで理解することではなく、「地域包括支援センター」という名前と、それが無料の相談窓口だと知っておくことだと考えています。ここさえ分かっていれば、申請の仕方も、使えるサービスも、専門職が一緒に考えてくれます。

もう一つは、親の年金額と持ち家の有無をだいたい把握しておくこと。自己負担割合も高額介護サービス費の上限も所得で決まるため、ここが分かると費用の見通しが立ちます(→年金シミュレーター老後資金シミュレーター)。

よくある質問

Q. 申請してから使えるようになるまで、どれくらいかかりますか?

認定結果が出るまで、原則として申請から30日以内とされています。ただし調査や主治医意見書の状況によって延びることもあります。急ぐ場合は、認定結果が出る前でも暫定のケアプランでサービスを使い始められる仕組みがあるので、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してください。

Q. 認定は一度受けたら、ずっと同じですか?

いいえ。認定には有効期間があり(新規は原則6か月など)、期限前に更新の手続きが必要です。状態が変わったときは、有効期間の途中でも区分変更申請ができます。重くなったのに軽い区分のままだと、使える上限が足りなくなります。

Q. 「非該当(自立)」と判定されたら何も使えませんか?

介護保険のサービスは使えませんが、市区町村が行う総合事業(介護予防・日常生活支援)や、自治体独自の高齢者向けサービスを利用できる場合があります。地域包括支援センターで相談してみてください。

Q. 親が遠方に住んでいる場合、どこに申請しますか?

親が住んでいる市区町村です。介護保険は住所地の市区町村が保険者になります。家族が離れて暮らしていても、申請の代行や相談は親の住所地の地域包括支援センターが窓口になります。

Q. 民間の介護保険には入るべきですか?

まず公的介護保険で何がどこまでカバーされるかを把握してから考えるのが順番だと考えています。公的制度には月の自己負担に上限があり、ケアプラン作成は無料です。そのうえで、居住費・食費や、上限を超えて使いたい分をどう備えるかという話になります(→わが家が入っている保険は3つだけ)。

まとめ

ほかの関連:高額療養費とは?障害年金とは?老後2000万円問題わが家が入っている保険は3つだけ

情報更新日:2026年8月|計算の根拠・参照元について|ツールの埋め込み。本記事は一般的な説明です。参照:厚生労働省老健局「介護保険制度の概要」(令和7年7月)/厚生労働省「介護サービス情報公表システム - サービスにかかる利用料」。サービスの単価は地域やサービスの種類によって異なり、認定の結果・利用できるサービスは個別の状況によります。必ずお住まいの市区町村または地域包括支援センターでご確認ください。