災害でもらえるお金は?罹災証明書の取り方と支援制度・税金の減免

更新:2026年8月 ・ 読了目安 約9分

台風や豪雨で家に被害が出たとき、多くの人がまず思い浮かべるのは火災保険です。ただ、公的なお金もいくつも用意されていて、保険金とは別に受け取れます。そして、そのほとんどが「罹災証明書」から始まり、申請しないと1円も出ません。慌てているときに調べ直さなくて済むよう、順番と金額を1枚にまとめました。

📑 この記事でわかること
  1. すべての入口は「罹災証明書」
  2. 住まいが壊れたとき:被災者生活再建支援金(最大300万円)
  3. 家族が亡くなった・重い障害が残ったとき
  4. 当座のお金を借りる:災害援護資金(最大350万円)
  5. 修理を自分で頼む前に:住宅の応急修理
  6. 税金と保険料は「減らす」か「待ってもらう」
  7. わが家の考え:覚えておくのは金額より「順番」
  8. よくある質問
  9. まとめ

すべての入口は「罹災証明書」

罹災証明書は、市町村が住家の被害状況を調査して、被害の程度を証明する書面です(災害対策基本法第90条の2)。支援金も、税の減免も、保険以外はほぼこれを起点にします。まずお住まいの市区町村に申請してください。

証明されるのは「どのくらい壊れたか」の区分です。判定は原則として損害割合(住家全体に占める経済的被害の割合)で決まります。

被害の程度損害割合おおよその意味
全壊50%以上基本的な機能を失い、補修しても元通りに使うのが難しい
大規模半壊40%以上50%未満構造耐力上主要な部分を含む大規模な補修が要る
中規模半壊30%以上40%未満壁・床・天井の過半の補修など相当規模の補修が要る
半壊20%以上30%未満被害は大きいが、補修すれば元通りに使える
準半壊10%以上20%未満半壊に準ずる程度の損傷
準半壊に至らない10%未満いわゆる一部損壊

この区分がひとつ違うだけで、受け取れる金額が数十万〜百万円単位で変わります。だからこそ片づける前に、被害の状況を写真に残しておくことが大切です。調査の前に修理や解体を済ませてしまうと、被害の程度を示す材料がなくなってしまいます。

判定に納得できないときは、再調査を申し込めます。多くの市区町村では、一次調査(外観の目視が中心)の結果に対して、内部も見る二次調査の申請を受け付けています。実際に住んでみて不具合が分かった場合も相談できます。まずは窓口で「再調査をお願いしたい」と伝えてください。

住まいが壊れたとき:被災者生活再建支援金(最大300万円)

住宅に大きな被害が出た世帯に、返さなくてよいお金が支給される制度です。「壊れた程度」で決まる基礎支援金と、「これからどう住み直すか」で決まる加算支援金の2階建てになっています。

1階部分=基礎支援金は、住まいの壊れ方だけで決まります。

被害の程度基礎支援金
全壊(やむを得ず解体した場合・長期避難も同額)100万円
大規模半壊50万円
中規模半壊なし

2階部分=加算支援金は、これからどう住み直すかで決まります。

再建の方法全壊・大規模半壊中規模半壊
建設・購入200万円100万円
補修100万円50万円
賃借(公営住宅を除く)50万円25万円

2つを足した額を受け取れます。いちばん多いのは全壊した家を建て直す・買い直す場合の合計300万円(100万円+200万円)。大規模半壊で建て直すなら250万円、中規模半壊で補修するなら50万円です。

世帯人数が1人の場合は、それぞれ4分の3の額になります(全壊で建て直す場合なら225万円)。賃借は公営住宅に入る場合を除きます。

いちばん誤解されるのが「どこでも使えるわけではない」という点です。この制度が動くのは、全壊が10世帯以上出た市町村など、災害が一定の規模に達した地域に限られます。同じ被害でも、隣の市では使えて自分の市では使えない、ということが起こります。まずは市区町村に「支援法は適用されていますか」と確認してください。適用されない場合でも、都道府県や市町村が独自の支援制度を用意していることがあります。

申請の期限は基礎支援金が災害発生日から13か月以内、加算支援金が37か月以内です。同時に出す必要はなく、先に基礎支援金だけ申請し、住まいの方針が決まってから加算支援金を申請できます。「建てるか借りるか決まっていないから」と待つ必要はありません。

家族が亡くなった・重い障害が残ったとき

自然災害で家族を亡くした場合には災害弔慰金、重い障害が残った場合には災害障害見舞金があります(災害弔慰金の支給等に関する法律)。いずれも市町村の窓口です。

生計維持者その他の家族
災害弔慰金(死亡)500万円以下250万円以下
災害障害見舞金250万円以下125万円以下

「以下」と書いたのは、実際の金額を市町村の条例で定めるしくみだからです。上の額が上限になります。弔慰金を受け取れる遺族は配偶者・子・父母・孫・祖父母で、そのいずれもいない場合は亡くなった方と同居または生計を同じくしていた兄弟姉妹です。

災害障害見舞金の「重い障害」は、両眼の失明、常に介護を要する状態、両上肢をひじ関節以上で失うなど、かなり重度のものに限られます。

当座のお金を借りる:災害援護資金(最大350万円)

もらえるお金だけでは足りないとき、市町村から低利で借りられるのが災害援護資金です。都道府県内で災害救助法が適用された市町村がひとつ以上ある自然災害が対象になります。

被害の状況貸付限度額
世帯主が1か月以上の負傷150万円
家財の3分の1以上の損害150万円
住居の半壊170万円(250万円)
住居の全壊250万円(350万円)
住居の全体が滅失・流失350万円

カッコ内は、建て直すために残った部分を取り壊さざるを得ないなど、特別の事情がある場合の額です。この制度でいう「家財」には自動車も含まれます。車が水没したときに思い出したい一行です。

ただし所得制限があります。世帯人員ごとの前年の総所得金額(市町村民税における額)が下の範囲内であることが条件です。

世帯人員前年の総所得金額の上限
1人220万円
2人430万円
3人620万円
4人730万円

5人以上は1人増すごとに730万円へ30万円を加えます。ただし住居が滅失した場合は1,270万円まで緩和されます。

利率は年3%以内で市町村の条例で定める率で、据置期間中は無利子です。据置期間は3年(特別の場合5年)、償還期間は据置期間を含めて10年。つまり最初の3年は返さなくてよく、利息もつきません。生活の立て直しに時間がかかる前提で作られた制度です。

修理を自分で頼む前に:住宅の応急修理

災害救助法が適用された市町村では、住宅の応急修理が受けられます。屋根・居室・台所・トイレなど、日常生活に必要な最小限の部分を修理する制度です。

被害の程度基準額(1世帯あたり・令和8年4月)
大規模半壊・中規模半壊・半壊757,000円以内
準半壊367,000円以内
これは現金の給付ではなく「現物給付」です。都道府県などが修理業者を通じて実施するしくみなので、先に自分で修理を契約してしまうと使えないことがあります。屋根に穴が開いていると一刻も早く直したくなりますが、まず市区町村に電話して、応急修理を使えるか聞くのが先です。応急処置としてのブルーシート展張などは別に用意されています。

なお、応急修理を使うと原則として仮設住宅には入れませんが、修理に1か月を超える見込みで自宅が半壊以上、かつ他に住まいを確保できない場合は入居できる扱いがあります。

税金と保険料は「減らす」か「待ってもらう」

所得税は2つの方法から有利なほうを選ぶ

災害で住宅や家財に損害を受けたときは、雑損控除災害減免法のどちらか一方を選べます。両方は使えません。

雑損控除災害減免法
しくみ所得控除(課税所得を減らす)所得税そのものを軽減・免除
条件災害・盗難・横領による損害損害額が住宅・家財の時価の2分の1以上、かつその年の所得1,000万円以下
使えない年制限なし所得が1,000万円を超える年は不可
翌年以降引ききれない分を3年間繰り越せるその年かぎり

雑損控除の額は、次の2つのうち多いほうです。

繰り越せるのは翌年以後3年間(東日本大震災や、令和5年4月1日以後に発生した特定非常災害による損失は5年間)。所得が少なくて控除しきれない年でも、翌年以降に効いてきます。

災害減免法のほうは、軽減される割合が所得で決まります。

その年の所得金額の合計軽減・免除される所得税
500万円以下全額
500万円超 750万円以下2分の1
750万円超 1,000万円以下4分の1

ざっくり言えば、被害が大きくて所得が低めなら災害減免法、損害額が大きく複数年に効かせたいなら雑損控除が有利になりやすい形です。ただし損害金額の出し方で逆転するので、両方で計算してみるのが確実です。会社員でも年末調整では受けられないので、どちらを選ぶにしても確定申告が必要です(→確定申告のやり方)。

保険料も減免・猶予の対象になる

いずれも自動では止まりません。窓口に申し出て初めて手続きが始まります。

わが家の考え:覚えておくのは金額より「順番」

ここまで金額を並べましたが、被災した直後に数字を思い出せる人はいないと思います。覚えておく価値があるのは順番のほうです。

  1. 写真を撮る(片づける前・修理する前に)
  2. 市区町村に罹災証明書を申請する
  3. 修理を契約する前に、応急修理が使えるか聞く
  4. 保険会社に連絡する(公的支援とは別に受け取れます)
  5. 落ち着いてから、支援金・税の減免を申請する

公的支援と保険金は両方受け取れます。支援金は保険に入っていたからといって減りません。ただし税の雑損控除を計算するときだけは、受け取った保険金を損害額から差し引きます。

そして備えの側で言えば、火災保険の水災補償が付いているかどうかがいちばん大きな分かれ目です。水災は選択制になっていることが多く、外していると床上浸水が1円も出ません。ハザードマップと保険証券を、災害が起きる前に一度見比べておくことをおすすめします(→火災保険の見直し)。

火災保険の保険料はいくら?

火災保険シミュレーターで計算 →

よくある質問

Q. 賃貸住まいでも支援金はもらえますか?

被災者生活再建支援金は「住宅が全壊した世帯」などが対象で、持ち家か借家かは問いません。借家に住んでいた世帯が新たに賃貸住宅に移る場合は、加算支援金の「賃借」に当たります。ただし対象になるかは被害の程度と地域の適用状況で決まるので、市区町村に確認してください。

Q. 車が水没しました。支援はありますか?

被災者生活再建支援金は住宅が対象なので、車だけの被害では出ません。一方、災害援護資金では「家財」に自動車が含まれます。税では、生活に通常必要な資産として雑損控除の対象になり得ます。車両の損失額には国税庁が示す計算方法があります。

Q. 一部損壊(準半壊に至らない)だと何も使えませんか?

被災者生活再建支援金や住宅の応急修理は対象外です。ただし火災保険の損害保険金や、自治体独自の見舞金、税の雑損控除(金額の条件を満たせば)は使える可能性があります。「支援制度の対象外=何もない」ではありません。

Q. 罹災証明書はいつまでに申請すればいいですか?

申請の期限は市区町村ごとに定められています(災害発生から3か月以内などとしている自治体が多くみられます)。支援金の申請期限とは別なので、まず罹災証明書を早めに取ることをおすすめします。

Q. 地震で壊れた場合も同じですか?

公的支援は、地震・台風・豪雨などの自然災害であれば同じしくみです。違うのは保険のほうで、地震・噴火・津波による損害は火災保険では出ず、地震保険が必要です(→地震保険は必要か)。

まとめ

ほかの関連:賃貸の火災保険確定申告のやり方医療費控除のやり方

情報更新日:2026年8月|計算の根拠・参照元について|ツールの埋め込み。本記事は一般的な説明です。参照:内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」(令和8年6月1日現在)/内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」/内閣府「災害弔慰金、災害障害見舞金の概要」「災害援護資金の概要」/国税庁タックスアンサー No.1110(雑損控除)・No.1902(災害減免法)。制度が適用されるかどうか、金額、申請期限は災害ごと・自治体ごとに異なります。必ずお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。