医療費控除の対象になるもの・ならないもの一覧|補聴器・眼鏡・接骨院はどうなる?
医療費控除でいちばん迷うのは「これは入れていいの?」です。国税庁が対象としているものを、実生活の言葉に置き換えて一覧にしました。判断が割れやすい補聴器・眼鏡・歯の矯正・タクシー代・接骨院や鍼灸は、それぞれ根拠まで示します。
📑 この記事でわかること
まず押さえる基準は「治療のためかどうか」
医療費控除の対象になるかどうかは、治療のために必要だったかで決まります。同じものを買っても、目的が違えば結論が変わります。
| 目的 | 扱い |
|---|---|
| 治療のため (病気・ケガを治す) | 対象になる |
| 予防・健康増進のため (病気にならないように) | 対象にならない |
| 美容のため | 対象にならない |
たとえば同じビタミン剤でも、医師が治療に必要と判断して処方したものは対象、健康のために自分で買ったものは対象外です。
もうひとつ条件があります。国税庁は「その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分」と定めています。治療目的でも、必要以上に高額な部分は認められないということです。
対象になるもの【一覧】
国税庁が挙げているものを、身近な例に置き換えて整理します。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 診療・治療 | 医師・歯科医師の診察代、治療費、手術費、入院費 |
| 医薬品 | 処方薬、治療のために買った市販の風邪薬・胃腸薬・湿布 |
| 通院にかかる交通費 | 電車・バス代(子どもの付き添いが必要な場合はその分も) |
| 入院にかかるもの | 部屋代・食事代(病院が出すもの)、コルセットなどの医療用器具 |
| 国家資格者の施術 | あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術(→くわしくは後述) |
| 付き添い・世話 | 保健師・看護師・准看護師や、特に依頼した人への療養上の世話の対価 |
| 出産 | 助産師による分べんの介助、妊婦健診、通院費 |
| 介護 | 介護保険で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担分 |
| 器具・装具 | 義手・義足・松葉杖・補聴器・義歯・眼鏡のうち、治療に直接必要なもの |
| おむつ代 | おおむね6か月以上寝たきりで、医師の「おむつ使用証明書」があるもの |
| 移植のあっせん | 骨髄バンク・臓器移植ネットワークに払う患者負担金 |
対象にならないもの【一覧】
| よくあるもの | なぜ対象外か |
|---|---|
| 健康診断・人間ドック | 予防のためだから。ただし例外あり(下記) |
| 予防接種 | 予防のため |
| ビタミン剤・サプリメント | 健康増進のため |
| 美容目的の施術・美容整形 | 治療ではないため |
| 近視・遠視のふつうの眼鏡、コンタクト | 治療のためではないため |
| 自家用車のガソリン代・駐車場代 | 国税庁が明確に対象外としている |
| タクシー代 | 原則対象外。公共交通機関が使えない場合は対象 |
| 医師への謝礼 | 診療の対価ではないため |
| 入院時の差額ベッド代(自己都合) | 治療上必要でない場合 |
| 家族に払った付添料 | 家族・親類縁者への支払いは名目にかかわらず対象外 |
| 里帰り出産の帰省交通費 | 診療を受けるために直接必要とはいえないため |
判断に迷うもの、根拠つきで
補聴器
対象になりますが、医師の証明が要ります。耳鼻咽喉科の医師(補聴器相談医)に診てもらい、治療に必要と判断されたうえで「補聴器適合に関する診療情報提供書」を書いてもらう流れです。この書類なしに家電量販店で買った分は、対象になりません。
眼鏡・コンタクトレンズ
ふつうの近視・遠視・老眼のためのものは対象外です。対象になるのは、治療のために必要と医師が判断したもの——白内障の手術後、斜視や弱視の治療用、緑内障など、医師の処方にもとづくものに限られます。
歯の治療・インプラント・矯正
インプラントは、治療のためなら対象です。保険がきかない自由診療でも構いません。金やセラミックを使った治療も、その状況で一般的に使われる材料であれば対象になります。
矯正は目的で分かれます。子どもの成長を妨げないための矯正や、噛み合わせの機能を治すための矯正は対象。見た目を整えるための矯正は対象外です。
通院の交通費
電車・バスは対象。領収書が出ないので、日付・行き先・金額をメモしておけば認められます。
タクシーは原則対象外ですが、公共交通機関が使えない場合は対象になります。夜間・緊急、足を骨折して歩けない、産気づいた——といった事情があるときです。
自家用車は、ガソリン代も駐車場代も対象外と国税庁が明記しています。
付き添いの交通費
子どもが小さくて1人で通えない場合など、付き添いが必要な事情があれば、付き添う人の交通費も対象になります。単に送り迎えをしただけの場合は含まれません。
接骨院・整骨院・鍼灸・マッサージはどうなる?
ここは説明が曖昧なまま出回りやすいところなので、条文の書きぶりのまま整理します。国税庁が対象として挙げているのは、次の書き方です。
「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒す、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)」
国税庁 タックスアンサー No.1122「医療費控除の対象となる医療費」
読み取れることが2つあります。
① 挙がっているのは「国家資格」の4つ
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師は、いずれも国家資格です。接骨院・整骨院で施術しているのは柔道整復師なので、ここに含まれます。鍼灸院も同じです。
一方、「整体師」「カイロプラクター」「リラクゼーション」はこの列挙にありません。これらは国家資格ではなく、名乗るのに免許が要らないためです。看板が似ていても扱いが違うので、通っている場所の資格を確認してください。迷ったら、領収書に施術者の資格が書かれているかが手がかりになります。
② 資格があっても「治療のため」でなければ対象外
柔道整復師の施術でも、疲れを癒す・体調を整えるといった目的なら対象になりません。ここは括弧書きではっきり除外されています。
ケガや痛みを治すために通ったのか、リフレッシュのために通ったのか——同じ院に通っていても、目的で結論が変わります。
ただし保険がきかない=医療費控除の対象外、ではありません。全額自己負担で受けた施術でも、治療のためであれば医療費控除の対象になり得ます。2つの制度は基準が違います。
回数券・前払いをした場合
医療費控除は「その年に実際に支払った医療費」が対象です(未払い分は、払った年に計上します)。回数券をまとめて買った場合の扱いは、税務署によって判断が分かれることがあります。金額が大きいときは、購入した年の分として申告してよいか、あらかじめ所轄の税務署に確認しておくと安心です。
保険金を引くときの落とし穴
計算式はこうです。
(支払った医療費 − 保険金などで補てんされる額)− 10万円
※総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%
控除額の上限は200万円
ここで間違えやすいのが、保険金の引き方です。
たとえば入院費20万円に対して入院給付金が30万円出た場合、引くのは20万円まで。余った10万円を、家族の歯科治療費から引く必要はありません。
高額療養費・出産育児一時金も同じ扱いです。
この点を知らずに「もらった保険金を全部引く」と計算して、控除額を少なく申告してしまう人がいます。
よくある質問
Q. 家族の分もまとめられますか?
まとめられます。生計を一にしている配偶者や親族の分なら合算できます。同居していなくても、仕送りをしている子どもや親の分は対象です。健康保険の扶養に入っているかどうかは関係ありません。
Q. 誰が申告すると得ですか?
原則として所得税率が高い人——つまり収入が多い人がまとめて申告した方が、戻る額は大きくなります。ただし総所得金額等が200万円未満の人は「10万円」ではなく「総所得の5%」が差し引かれるため、医療費が10万円に届かない年は収入が少ない側で申告した方が有利になることもあります。
Q. 領収書は提出しますか?
提出しません。「医療費控除の明細書」を作って添付します。ただし領収書は5年間保管してください。税務署から提示を求められることがあります。健康保険から届く「医療費のお知らせ(医療費通知)」を添付すれば、明細書の記載を簡略にできます。
Q. 市販薬が多い年はどうすれば?
セルフメディケーション税制という選択肢があります。対象の市販薬の購入額が年12,000円を超えた分(上限88,000円)を控除できる制度で、健康診断や予防接種を受けていることが条件です。通常の医療費控除とのどちらか一方しか選べないので、金額を比べて有利な方を選んでください。
Q. 去年の分を申告し忘れました
さかのぼって申告できます。医療費控除のような還付申告は5年間できるので、2026年中なら2021年分まで手続きが可能です。
まとめ
- 判断の軸は「治療のためか、予防・美容のためか」
- 補聴器は医師の診療情報提供書、眼鏡は治療目的の処方があってはじめて対象
- タクシー代は原則対象外、自家用車のガソリン代・駐車場代は明確に対象外
- 接骨院・鍼灸は、国家資格者(柔道整復師・はり師など)の施術で、治療目的なら対象。整体・カイロは国税庁の列挙にない
- 保険金は「その治療にかかった医療費」からだけ引く。引ききれない分を他から引く必要はない
- 申告を忘れていても5年さかのぼれる
迷うものが残ったときは、所轄の税務署に電話で聞くのがいちばん早く、確実です。